人事異動の妙というか、偶然と言えば偶然なのだが、自分の直属の上司が出世して、その上司がチャンスをくれている状況。関根がうまくやれば去年一軍にいて三浦監督スタイルを知らないレギュラーの人間に刺激を与えられるし、うまくやれなければ容赦なく斬り捨てて「子飼いの部下さえ切り捨てる非情な実力主義の指揮官」のイメージを作りチームに厳しさを持ち込めるので、番長としては負けない博打。
DeNA・関根大気 8年目の定位置奪取へ、訪れた最大のチャンス/レベルアップ宣言
機動力あふれるプレーでチームの得点力アップに貢献したい
背筋がピンと伸びた。関根大気にとって濃密な時間が待っていた。一軍スタートとなった沖縄・宜野湾キャンプ初日。全体練習を終えた特打で、三浦大輔監督が打撃投手を務めてくれた。約15分間。現役時代と変わらない精密なコントロールに、気持ちを込めたスイングで応えた。「僕はアピールするしかない立場。一軍でチャンスをいただいていることに感謝して、結果で恩返しをしなければいけないと思っています」。高卒8年目の25歳。チームに空いた穴を埋めようと奮闘している。
各球団にゴロゴロ……「現役ドラフト」の実現で生き返る選手は?
長く外野のレギュラーを務め、昨年は主に「一番・中堅」として貢献した梶谷隆幸がFAで巨人へ移籍。ラミレス監督も退任した。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ソトやオースティンら外国人選手は来日できないまま。左翼・佐野恵太を除けば、現時点で外野の2枠が空席状態とチャンスがめぐってきた。「自分が現状、今のチームに何を求められているのか。『こういう選手っていないよな……』とか。それを考えていこう」。イースタン・リーグで打率.301の好成績を残しながら、昨季はプロ入り初めて一軍出場なし。当時の三浦二軍監督は常に寄り添い、伸び悩む有望株に助言を送った。
「勝つために適切な行動ができるかが大事。進塁打だったり、バントだったり、自分自身が進塁したり。試合の中で必要とされることを、その瞬間にできる選手でありたいと思います」。個人成績を伸ばすだけでなく、いかに勝利へつながる自己犠牲ができるか。神里和毅や細川成也、桑原将志らライバルが大勢いても「レギュラーを取るために頑張る。毎年、それは変わらないことなので」と前を向いた。DeNA誕生10周年のメモリアル。満を持して才能開花の予感だ。
写真=井田新輔
週刊ベースボール