確かに岩隈と原監督自身、或いは読売との関係性が、単に「働くかもしれない過去の名選手を取ったチーム」ではなく、「日本を代表する選手の復活を願い、出身チームでもないのに野球界全体の視野から最後の挑戦の場を与えた」に変わってしまった不思議な違和感(かと言って不快なものでは全くなく、むしろ温かい気持ちになる)があった。原は、WBC監督をやってからそういう目線がより強くなった感じがするし、星野もそんな風だった。良し悪しではなく、ノムさんや落合にはその目線はなかった。
一方、金本のコメントも素晴らしい。監督も人間なので失敗することもあるだろうし、誤った判断をすることもあるだろう。しかし、チームを勝たせてくれればそれでいいし、「育てる」はおこがましいにしても、少々の我慢は必要なのだろう。まあそれでも、監督の選定プロセスそのものはもう少し慎重にすべきだと思う。矢野の時は熟慮の上での結論だったのか、与田はどうか?チーム在籍経験があって、知名度や爽やかさもあり、急に頼んでも引き受けてくれるからという「軽い」理由ではないか?森繁や西村、福良あたりも、プロセスの容易さで選んでないか。シーズン中に退任した後の監督代行がそのまま翌年の監督になることが多い流れも気になる。FAでの獲得時や残留交渉時に切ってしまった監督手形をそのまま履行しているようなケースも見られる。井口だけでなく、三浦もその口だろう。読売と比べれば、どうしても最近の他球団の監督選考プロセスが軽く見えるのも確か。それなら経験豊富だったり、手腕が確りと見込める「プロ監督」を起用するのも手だが、仰木さんやノムさんや星野さんも他界し、あまり今の世代にプロ監督が少なくなってしまった。

巨人は第3次原政権 阪神も監督を育てていかないと

配信

日刊スポーツ
巨人は第3次原政権 阪神も監督を育てていかないと

巨人対阪神 勝利監督インタビューに臨む阪神矢野監督(撮影・前田充)

<巨人1−2阪神>◇24日◇東京ドーム 巨人で引退を決めた岩隈久志が球史に残る名投手なのは間違いない。温厚な性格も知られるところだ。それとは別に、前日の引退会見の様子はある意味すごいなと感じた。指揮官・原辰徳がサプライズで登場。花束を渡していた。 【写真】巨人対阪神 9回表を前に選手交代を告げる原監督 繰り返すが岩隈はレジェンドだ。しかしこの2年間は仕事をしていない。冷静に考えれば巨人は旬を過ぎたベテランを獲得し、戦力にできないまま、終わる訳だ。岩隈へのリスペクトとは関係なく、球団は何をしてるのだと言われても仕方がない。これが阪神ならおそらくボロカスだ。 しかし巨人ではそうならない。そこに最大の伝統球団としての懐の深さを感じると同時に、原という監督の絶対的なパワーを感じる。岩隈獲得に関しても自身がWBC日本代表監督だったときの縁が大きい。その原の下、この2年間で連覇を確実にしているので、余計にそういう話にはならないのかもしれない。 最近、阪神の指揮官・矢野燿大が批判されている。選手起用、采配をはじめ、一部の虎党から風当たりが強い。もちろん、このコラムで批判的に書くときも少なくない。しかし、それと「やめろ!」というのは、やっぱり違うと思う。 前監督の金本知憲が1年目の指揮を執る前、虎番記者たちに話していたことを思い出す。闘将・星野仙一を持ち出されたときだ。「だってあのときの星野さんは何度目の監督だったんよ? オレは初めてよ。そこはいっしょにせんでほしい」と正直に言っていた。 原も第3次政権の2年目だ。ベンチで自信たっぷりの表情を見るたびに1次政権の03年を思い出す。事実上の解任が決まった阪神最終戦の甲子園で星野と抱き合い、悔し涙を流していた光景が目に浮かぶのだ。 矢野は監督2年目。1年目は3位で今季もまだ2位が狙える位置にいる。虎党は「阪神は選手が育たん。ええ監督がおらん」と常に言う。こちらも言うのだが、そこには選手も指揮官も育ってほしいというかファンが、周囲が、育てるという視点も必要だと思う。 そのためには虎党が納得する戦いをすることが大事だ。ようやく菅野智之を相手に白星をつかめた。高橋遥人はよく投げたし、継投もはまった。原口文仁はさすがだった。ナイスゲームだろう。こんな試合をシーズンの早い段階で、数多く見せることができれば見方もまた違ってくる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)