2005年08月10日

佐々木について自問自答してみた1

 とうとう、この日が来た。ブログを中心に皆さんの反応を見させていただいたが、「何はともあれお疲れ様。ありがとう。」という声と、「もうどうでもいいや。チームはAクラスを目指して頑張っている。闘いに戻ろう。」という声と、「わがままな男だ。チームのことを考えているのか!」という声に大きく分けられるかと思う。私もそうだが、本当にきちんと、佐々木という大投手のことを総括できていないまま、この日を迎えてしまった、という感じである。そこで、自分自身の総括のためにも、自分の中から湧き上がってくる疑問に対して、自問自答してみた。心の整理をつけたいだけで、決して単なる佐々木賛歌でも、佐々木批判でもない。

−佐々木は大投手だったのか?
間違いなく大投手であった。ベイスターズ暗黒時代から孤軍奮闘で抑えを担い、チーム全員を「勝てる」という気持ちにさせる勝ちパターンを確立、チームのみならず他チームまでをもその魔術にかけ、本当に優勝してしまった。特に97年と98年はプロ野球史上最強に凄かった。高津、小林雅、豊田...、クローザーという存在は確かにその後次々に登場してきたが、この2年間の佐々木ほど「絶対的」な存在は、誰一人いない。

−引き際があまりにも見苦しくないか?
やはり昨年の8月の3連敗が引き際だったのかもしれない。当時、佐々木が球団に引退申入れをし、球団が慰留したという話になっていたが、それが真実だったのかもしれない。佐々木は当然限界を感じ取って(それは本人が真っ先に、誰よりも早く気づくはずである)、もう耐えられなくなって引退を決意したのだと思う。それを、誰がどう慰留したのかは知らないが、貰っている年俸の高さと球団の期待の高さを「責任感」(ほんとうは出来もしないのに)、敏感に、そして極めて真摯に感じ取って、本当に「翻意」したのだと思う。それが彼なりの責任の取り方だった(これは「迷惑だ」とか「給料泥棒がもう1年の契約を延ばした」という周囲の見方とは別の次元の彼だけの論理である。だが、決めるのは彼自身だけであり、彼が彼自身の論理に従って動いた。)。
しかし今季に入っても、思うに任せない体と投球は、年俸と期待のプレッシャー、自らが自らに課している責任に反比例していた。そのギャップは昨季以上に大きくなっていた。だが、一旦「翻意」して現役を続行している以上、引くに引けない。精神力が強く、偉大な男だからこそ、そのギャップに耐える力も大きくなっている。彼にとって、スパッと辞める、という選択肢は取りえない状況になっていた。それが「あんな球しか投げられないのになぜ辞めない?」というところまで来ていた。年俸が1億円だったり、単なる一流選手だったら我慢ならないところまでも、我慢してきてしまっていた。そういえば、必ずしも一流選手の引き際がキレイだとは限らない。もちろん、そこに自己に対する過大な幻想や傲慢があったこともまた、事実であっただろう。

−なぜこの時期に引退なのか?チームは優勝やAクラスを闘っている公式戦の重要な局面ではないか?わがままだ。
そのとおり、一般人の常識観からすれば当然わがままである。だが、本人は少しも自分をわがままだとは思っていない。そのくらい彼は尊大になっていた。これがいいか悪いか?そういう男だからこそ、傍若無人にクローザーが務まったのではないか。もはや我々一般人の常識を彼に問うても意味がないことかもしれない。

−なぜ、あの高すぎる給料を返上しなかったのか?これからもしないのか?
例えば昨季の不甲斐ない結果と今季の予想される窮状を考えて、「事前に」今季分の給料の一部を返上したり、一部を出来高払いにするというのも庶民の発想からすれば当然アリである。現に清原は複数年契約で結んでいた年俸の一部を返上したことになっている。しかし、佐々木の中ではそんな論理は全くない。この高い「責任感」があるから現役を続行しているわけであって、年俸が2億になったら現役を続ける意味がないからである。これは、話はまるで矛盾かもしれないし、原因と結果が逆になっているかもしれないが、彼の中では正当な理屈になっている。つまり「給料を返すくらいならもう辞める」と。
それでは辞めることを決めた今、今季の給料をどうするか?という話も、ここまでそのプレッシャーに耐えて、上述の「ギャップ」に耐えてきたプロセスに対しての正当な対価である、という理屈になっているに違いない。
凡人は、高い給与と遥かに責任感ある仕事が与えられると腰が引けて「私には高すぎる給与です」とその給与の一部を放棄すると同時に、仕事の責任感から逃れることを選ぶかもしれない。そして、その理屈に共感を感じることもできる。プロセスはどうあれ結果が出なければ給料で責任を取る、という発想にも違和感を覚えない(これが今サラリーマン社会で行われている成果主義ならぬ結果主義であるから)。
しかし、佐々木にはそんな発想は微塵もない。そんな経験もない。ずっと成績を残し続けて給料を増やし、そしてその給料に見合う働きをするためのプロセスを実行してきたのだ。以前は結果を出した。そしてこの2年は結果が出なかった。だが、それが何だ。プロセスは「6億5千万のプロセス」であったのだ。
というのが佐々木の発想ではないか。だとすれば、凡人の批判はその批判の意味すら彼には理解できないであろう。そんなにプロ野球選手に一般常識や普遍的なものの考え方を期待するのが間違っているのかもしれない。

−こういうときこそ先輩やOBが、チームに迷惑がかからぬよう、ビシッと言うべきではないか?
彼が直接の先輩として話を聞けるのは、OBなら斉藤明夫くらいではないか?この役割を担ってきた先達など誰もいないからである。この役目でチームの誰よりも存在感を持ち、勝利に貢献した、という強烈な自負がある。であれば、野手OBや先発OBの話など聞くに値しないであろう。では斉藤明夫の話を聞けるか?彼の時代のストッパーと佐々木が確立したクローザーの地位はまるで違う。その意味でもパイオニアである佐々木は、牛島や江夏の話すらロクに聞けないだろう。


偉大な選手は怪物になってしまっていた。常人には凡そ理解できない怪人になっていた。つまり、周囲がどう思おうが、周囲にどれだけ被害を与えようが、彼には全く悪いことをしている意識はないのである(それはそれで哀しい)。彼から受けた恩恵は彼を怪物に育て、彼から恩恵を受けた者は最後にはその怪物を追い払うのに大きな労力を使う羽目になった。彼を人間と考えるからいけないのだ。彼は哀しい怪物になってしまったのだ。小泉さんの政界や経済界でもそうであろう。偉大なリーダーやパイオニアは、彼が偉大であるがゆえに、最後に老醜を晒し、より大きくなった影響力が負の方向に働く(影響力の少ない凡人は老醜を晒したところでたかがしれているし、小市民の常識はそんな老醜を晒すことを許さない)。残された人間は、先に受けた恩恵からその老醜を割り引いて考えておかねばならないのである。
結局、やっと怪物を、大きな存在を、その悪夢を振り払うことができた。ベイスターズの真の「再生」がこれからやってくることだけは、確実である。

be_a_hero_in_akasaka at 03:30│Comments(6)TrackBack(22)ベイ 真面目な議論 

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この記事へのコメント

1. Posted by YOKOHAMA☆LINER   2005年08月10日 03:53
怪物…悪夢…再生

他人事ながらヨミウリはベイ以上に大変ですよ。再生が。
怪物だらけですから…
2. Posted by be a hero in akasaka   2005年08月10日 04:03
LINERさん!こんばんは。
それでも読売は、この手の問題処理には一日の長がありますよ。それに佐々木ほど尊大なヤツもいないですし。怪物くんはゾロゾロいますが。
3. Posted by たむ   2005年08月10日 04:26
こんにちは!
本当に的を得たコメントだと思います。
終わりがどうであれ、ベイの一時代を築いた選手に変わりはない。
とりあえずは、お疲れ様といいたいです。
4. Posted by りぃ   2005年08月10日 08:15
TBありがとうございます。

佐々木に関しては色々あり、素行にしろ今回の登板にしろ色々な意見がありますよね。

とりあえず、わたしもお疲れ様と、言いたいです。
5. Posted by TATEJIMA 4030   2005年08月10日 10:52
やはり泣きましたね。本当にあの世代は本当によく泣く。
昨日の試合はまったくナンセンス。公式戦が茶番劇となりましたね。
6. Posted by しゃお   2005年08月10日 11:59
コメント&TB、ありがとうございました!

一時代を築いた投手だけに、昨日のような登板は悲しいですね。
佐々木投手自身のファンにとっては地元での、しかも巨人戦での登板は嬉しい事かも知れませんが、チームとチームのファンは置いてきぼりをくらったような・・・そんな登板だったんじゃないでしょうか。

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