土肥という男はずっと気になっていた。決して格好のいい男ではない。西武で先発をやりたい!と拘ってトレードに出された。勿論あの投球フォーム、どうみても本格派には見えない。近鉄時代からのローズに強いのもうなずける、本人が「そういうつもり」はないかもしれないが、あの風貌も含めて、どうしても職人に見えてしまう、そんな男であった。

 読売というチームは「野球」というゲームをどう戦おうというのか。ただ投げて、ただ打っているだけ。今の時代、大リーグはすっかり「戦術」の勝負となってきている。勿論日本のプロ野球も30年以上そういうゲームをやっている。ある意味クラシカルな戦いともいえようが、その戦い方はすっかり我が軍のカモとなっている。5点の差がついたところで、今日のゲームは既に土肥の初完封だけに焦点が絞られたと言っていい。

 土肥は昨年我が軍にやってきたときから、決してカッコイイ先発投手ではなかった。セットアッパーのキャリアが長かったからか。序盤で試合をぶち壊すことはない。試合を作るのはさすがにうまい。しかし、中盤や終盤にどうしてもバテが見える。

 勝負のスタイルは実は強気。そしてストレートで勝負のできる本格派。シュートとスライダーで横のスペースを大きく取る投球術も実に堂々たるもの。決して逃げの投球を重ねる技巧派ではない。

 今年は野手陣との息もあった。土肥が投げる試合はなぜか大量点が多い気がする。まるで野手が土肥に先発の歓びをじっくり味あわせるかのように。そして今年はプロ入り初完投も達成した。しかしまさに「完投のための完投」。疲れがたまってしまうような、格好の悪い試合が多かった。現に好投した次の試合では疲労が残っていたり、疲労のあまり先発を一回飛ばされたり、手抜きのできない一生懸命さが裏目に出ることも多かった。

 それでも土肥にはすがすがしさと、このチームの生え抜きにはない、ひょうひょうとしたずるさみたいなものや、たくましさや、自己主張がある。エースと言える存在にはなりえないかもしれないが、この男が背負っているものは実はかなり大きいのかもしれないと感じていた。

 それが土肥の意外な不器用さなのか、今年は読売と古巣西武にしか勝っていない。たくましいではないか。その読売戦での先発であった。だが、今日はカッコ悪い不器用さは影を潜めていた。8安打を打たれても球数は少ない省エネ投球。打席では4度のバントの機会で3つを成功させるクールさ。スイスイとプロ入り初完封を成し遂げた。昨年夏我が軍の先発を任されてから1年。実はまだ若い29歳の彼は着実に進化を遂げている。実に痛快で嬉しい一夜であった。

 試合は全く危なげなかったので、他選手の個人的な(勿論チームプレーの中の動きではあるが)目に付いた点を箇条書きで書いていこう。こういう感じになるのが大味な読売戦たる最大の所以だろう。

○村田の満塁HR。やはり彼が目指しているのは「完璧な男」多村先輩か。目標となる男が身近にいれば、そのモチベーションは違う。更にその男が急にいなくなれば。少しずつ村田も大人になっていっているのか。右中間にぶち込んだことを心から喜んでいた。外野フライの意識で右中間方向へ。いいHRだった。

○相川の劇走。6回先頭打者で出塁。土肥のバントが成功し1死で得点圏へ。石井はさほど深くない右飛なるも、相川が果敢にタッチアップで3塁を狙う。「読売野球」はそれを阻止しない。「失敗を恐れぬ」という言葉を思い出した。なんとなくその意気が空間に影響を与えた。続く小池がきれいなHR。小池にとっても大きな意味があった相川の好走塁だった。

○石井琢のつまづき。土肥が省エネを本気で意識している8回。ゲッツー性の二ゴロを石井にトス、ゲッツー確実かと思われたそのとき、2塁ベースを踏む足の反対側の足である左足がベースにひっかかったか、まさに「コケた」。トシを取ると足元があやしくなる。「なんで?」というところでコケたり、バランスを崩したりする。いくらプロ選手といえでもタクローも人の子?

もはやこの相手は我が軍の敵ではない。とうとうAクラスに入り、阪神・中日への挑戦権を手にした。「弱気をくじく」ことができることは選手も我々も、よくわかった。さあ、いよいよ強き相手を倒してゆこう!


【注目商品】455L フレンチドア・除菌イオンノンフロン冷蔵庫   ☆大人気、話題の保温庫付!!...
【注目商品】455L フレンチドア・除菌イオンノンフロン冷蔵庫   ☆大人気、話題の保温庫付!!...